嗅覚障害の症状
嗅覚障害の症状として、以下のようなものがあります。
- 嗅覚が低下し、匂いが感じられなくなる
- 何も匂いを感じない
- 特定の匂いだけ受け取れない
- 常に異臭を感じる
- 鼻の中に不快な匂いが常に漂っているような
- どの匂いでも同じ匂いだと感じてしまう
- 特定の匂いだけ非常に強く感じられる
日常生活で感じる嗅覚の異変
- 香水や柔軟剤の匂いが感じられず、沢山使用することがある
- 食事の風味が分からず、美味しさを感じない
- 腐っている食べ物だと気付かない
- ガス漏れなどのトラブルに気付かない
- 強い匂いが周りにあるにもかかわらず、自分だけ気づかない
- タバコや線香の煙・匂いに気付かない
- 何も匂っていないのにもかかわらず、突然匂いを感じる
- 本来の匂いと異なる匂いを感じる
嗅覚の仕組み
ニオイ分子が鼻腔内に入ると、嗅粘膜の粘液に溶け込み、嗅細胞が興奮して電気的な信号を発生させます。この信号が大脳に伝わることで、においの感覚が生じます。
鼻の粘膜に嗅細胞が数百万個存在します。(一般的に嗅覚が良いとされる犬の嗅細胞は2億個程度です。)
嗅覚障害の種類と原因
嗅覚障害は、においを感じる経路に障害がある場合に発生します。発症の原因や検査結果に基づいて、以下の3つのカテゴリに分類されます。
気導性嗅覚障害
副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔湾曲症などの病気をきっかけに、においが嗅粘膜に届くルートが遮断されることによって発生します。
副鼻腔炎
鼻から吸った空気が嗅細胞の嗅裂(きゅうれつ)という場所に届かないために発生します。副鼻腔炎により、鼻づまりや粘膿性の鼻水が出ることがあり、これは「蓄膿症」として知られています。特に、鼻茸を伴う好酸球性副鼻腔炎は嗅覚障害を引き起こし、難治性であることが多いです。
嗅神経性嗅覚障害
嗅粘膜に分布する嗅神経は、風邪(インフルエンザや新型コロナウイルス感染症など)や薬剤の影響などによって障害を受け、においを感じにくくなることがあります。また、頭部を打った際に嗅神経の末端が損傷することで、嗅覚障害が生じることもあります。
新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルスは、細胞の表面に存在する特定の受容体であるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合し、細胞内に侵入して増殖することが知られています。この受容体は、鼻の上皮細胞に沢山存在し、特に年齢が高くなるほど多く見られます。子どもの場合、この受容体の量はあまり発現されません。
嗅覚や味覚の喪失は、新型コロナウイルス感染症の早期兆候として現れることがあります。しかし、これらの感覚障害は自然回復することが多く、60~80%の場合は2週間以内に改善します。治療を急がなくても問題はありませんが、10日以上経過しても改善しない場合は、耳鼻咽喉科での診察を検討することをお勧めします。
中枢性嗅覚障害
脳挫傷や脳腫瘍、脳出血、脳梗塞などの脳の病気や外傷、神経変性疾患であるパーキンソン病やアルツハイマー型認知症などによって、嗅覚障害が発生することがあります。これらによる嗅覚障害は、嗅覚の識別能力が低下によって起こっているケースが多いです。
嗅覚障害の検査・診断方法
問診
嗅覚障害の原因を探る上で最も重要な手段です。嗅覚の異常が始まった時期、何らかの出来事が関連していないか、どのような症状が現れているか、服用中の薬や他の健康問題があるかなど、様々な情報を集めることで、嗅覚障害の性質を理解することができます。
静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)
肘の静脈から注射された薬剤のにおいを使って調べる検査です。吐く息の中にこのにおいが含まれており、鼻の後ろから感じ取れるかどうかを確認します。「鼻の穴から感じる匂い」以外の検知に特化しているため、副鼻腔炎などで鼻の入口からにおいが分からない場合でも、嗅神経が残っているかどうかを調べることができます。
副鼻腔CT検査
副鼻腔炎や鼻中隔弯曲症の有無や症状の程度を確認する検査です。嗅裂の形が正常かどうかを調べるために行われます。
鼻腔ファイバースコープ検査
鼻の内部を検査し、嗅粘膜の状態を調べる検査です。
血液検査
血液検査を通じて、好酸球の割合やアレルギーの存在、亜鉛の濃度などを評価します。
嗅覚障害の治療・治し方
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎が原因であれば、それらの症状を改善することで嗅覚障害が解消することがあります。
鼻洗浄やステロイド点鼻薬、内服薬、漢方薬などを使って治療を行いますが、治療効果が見られない場合もあります。